セルフライナーノーツ「歌曲作品集[小園]」M-7,M-8

M-7 [斜陽]
この曲はこのアルバムの中でも最後に作りました。
本当は野沢菜(山本ひかり)さんに歌ってもらおうと思っていたので
すがタイミングが合わず、紆余曲折を経て自分で歌うしかない状態に
なり、結果歌ったといういきさつがあります。発売から約一年、今と
なっては自分でも耳慣れた感じになっていますが制作時は何かと大変
だった事を思い出します。

この曲はアルバムの中で最後に作ったという事もあって他の曲には無い
要素を入れたかったのですが、それは何かというと単純なコード進行。
結果的にそうなっていない部分もちょっとだけあるのですが大まかには
耳馴染みの良いサウンドになっていると思います。もちろん独自性をそ
ぐ事の無い様に気をつけました。いわゆる「対比」というやつなのです
が、他の曲ではめまぐるしく変わる和音に対してメロディーの動きは控
えめに、逆にハーモニーの動きが弱い時はメロディーに動きを与えると
いった感じです。この曲の場合はどちらかというと後者寄りになります。
これもデモをアップしてみましたので良かったら聴いてみてください。

https://soundcloud.com/smallgardenstudio-1/shayoh_demo

聴いて頂けるとわかるのですが(聴かないとわかりません…すいません。)、
自分で歌うとは決めたもののサビの掛け合い部分は女性パートとして
意識して作っておきました。またデモバージョンの歌入れはハナモゲラの
ものは残って無く、歌詞が決まるのも結構早かったのだなと思います。
そしてこの単純なドラム。これは言わずもがな?ドナルドフェイゲンの
アルバムに多いあの雰囲気を意識しています。トラックは全体的にシンプ
ルですがあらかじめアレンジで肉付けする事を意識していたのでコードの
ベタ打ちで作っておきました。なんともデモっぽい音源です。

Fix版ではサビ前のブレイクに入っている野沢菜さんの咳払いが何とも
印象的です。あれは編集中に何か面白い事が出来ないかなと思って残し
ておいたのですが上手く収まって!?良かったと思っています。
この曲は楽器のソロもアルバムの中では一番多く、また特徴的です。
ピアノからギターからサックスまで出来る限りのソロを盛り込みました。
サックスは歌が終わった後なのでなかなか印象に残りづらい所ですが
結構頑張って吹いたので良かったら聴いてみてください。

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M-8 [Fill Up Your Life]
この曲はこのアルバムの中で一番古い時期に作ったものです。
元々は知り合いの自主制作コンピレーションに曲が足りないという話を
付き合いのあったこの曲の作詞も行っているveronica(以下ベロニカ)
さんからされまして、時間もあったので作ってみようと思って出来上が
ったものです。

バラードになったのには理由があります。それはちょうどこの話を聞いて
すぐにベロニカさんの母が亡くなりました。彼女との長い付き合いの中で
あまり知らない面々を知る事になったその出来事は僕の中で大きくなり、
彼女のお母さんへの鎮魂歌となりました。気持ちとしては亡くなったお母
さんへというよりはベロニカさんへの慰めや情緒的な印象をもってして
曲を作っていたと思います。僕は親戚や友人が亡くなっても自分の中で
生き続けているその人達がいつも自分を見てくれているものだと思って
います。そのような気持ちを込めて作りました。

ただ、歌詞についてはベロニカさんは僕の曲作りの事情は知らないので
上記のような意味合いとは若干違ったものになっているようですがそれ
でも曲と通ずるところがあると感じます。それがこの曲をスピリチュアル
でありながらも地に足着いた感慨深さを与えてくれたのだと思います。

アルバムを通して聴いて頂けるとわかると思うのですがこの曲だけ少し
浮いている印象を持たれるかもしれません。僕自身もこの曲をスモール
ガーデンのアルバムに入れるかどうかはとても迷ったのですが、最終的に
は入れる判断をしたのは「スモールガーデン=小園=自分」という絶対的
な繋がりを無視する事は出来ないので、アルバムとしてのまとまりよりも
スモールガーデンの内側にも少し触れて欲しいと思いこの曲を入れる決断
をしました。

ちょっとだけ曲制作のお話をさせていただきます。
この曲では実際に演奏しているのはベースとサックスだけで他は打ち込み
です。一時期はギターもキーボードも沢山練習して上手く弾ける様になり
たいと思っていましたがあまり根を詰めすぎても不満が募るだけなので、
打ち込みの方が綺麗に聴こえるならそれで良しとするようになりました。
前に冨田ラボの冨田恵一さんも自身のDVDで似たような事を言っていて
「やっぱりそうなんだ」と思った経緯もありますが、やはり僕自身の積み
重ねてきたスキルが打ち込みか演奏のどちらが良いではなく音楽として、
楽曲として制作する上で制限された時間内に仕上げる事が優先されている
からだと思います。(しかし常に冨田さんの背中を見ている!)

 


お読み頂いてどうもありがとうございます。
次回は2ndミニアルバムの「out of music」のライナーを書きたいと
思います。